小説

桜吹雪
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●プロローグ

今の時代、
ゲーセンにカラオケにといった遊び場がたくさんある。

こんなに楽しいのに年寄りは何故こんな楽しい所に遊びにこないのだろうか。

古くさい歌舞伎や人形浄瑠璃。

何処が楽しいの?
最近のものは使うのに見るものや遊ぶものが昔だ。

私、
苑崎結子はいつも思う。

私以外はそんなこと考えたこともないんだろうけど・・・。

私はバリバリの女子高生で部活なんて行かないで学校の帰りは毎日遊んでいる。

1年の時に入っていたソフトボール部の人達に陰口を叩かれても気にしない。

「ゆっこーカラオケ行かない?」
「まな!」

友人の愛。

愛はものごころ付いた時から父親がいなくて母子家庭だ。

そんな環境で育ってきた愛だが気が利く利口な子だと教師から言われている。

「今日もカラオケ行くしょ?」
「行く行く!今日は絶対に80点以上とってやるし」
「ゆっこは音痴だからねぇ・・・」

愛は私をかわいそうな目で見た。

「何よぉ!愛が上手いだけだし」
「ゴメンって;」
「それより早く行こ?」

愛はうなずいて私と一緒に教室を出た。

私はお母さんに買ってもらったばかりのお財布の中身を見た。

何も入っていない・・・

「やばっ!」
「何どうしたの?」

愛が財布の中をのぞく。

「弟にお金貸してたんだった」
「あらら〜・・・取ってくる?」
「うん、ゴメン。取ってくる」

愛は先にカラオケに行って私はお金を弟に返してもらいに家に一旦帰った。

「大牙!!私のお金返しなさいよ!!」

私は部屋でゲームをしている大牙の頭をはたいた。

「痛ぇな・・・!何すんだよ!」
「だからお金!」
「金がないから借りたんだ。返す金なんて持ってるわけないだろ」

私は腹が立って大牙の頭を2発殴った。

「もぉ・・・カラオケ行けないじゃないの・・・」

私はしょうがなく愛のケータイに電話をかけた。

「もしもし?」
『よぉゆっこ。返してもらったの?』
「それが無理だった・・・」

私はため息をついた。

『そうなの?じゃぁ今日は無理だね・・・私1人で歌って帰るわ』
「んーゴメン;」
『ほんじゃ』

愛から電話を切られた。

怒っていないのは分かるがなんとなく悲しかった。

「大牙のせいだ」

私はわぞと大牙の隣でつぶやいた。

さすが私の弟。
気にも止めていない。
っていうか話を聞いていない。

無性に腹が立って部屋でストレス解消で漫画を読もうとしてドアを開けた時

「結子ぉぉぉぉぉ!!」
「おじいちゃん!?」

おじいちゃんが腰を曲げながらドタドタ走ってきたのだ。

「な、何?どうしたの;」
「結子、大事な話があるんじゃ」
「な・・・何・・・」

私はつばを飲みこんだ。

「実は・・・」
「実は・・・?」
「一緒に・・・」
「一緒に・・・?」
「遊びに行かないか?」

ガクッ

私は全身の力が抜けてこけた。

「何でそんな真剣な顔して言うのよ・・・;」
「真剣な顔をしなきゃ着いてきてくれないと思ったんじゃ」

おじいちゃんはわざとらしくハンカチで目を拭いた。

おばあちゃんは今年の春に永眠してしまった。

ついに1人になってしまったおじいちゃんはさみしいのだろう。

「・・・いいよ。着いてってあげる」
「本当か!?」
「うん。何処?」

おじいちゃんはしばらく考えて手をたたいた。

「歌舞伎」

げっ!

私の1番苦手な分野だよぉ・・・;

私はすぐに断ろうとしたがおじいちゃんが語り始めた。

「よくばあさんと行ったからのぉ・・・最近見てないからなつかしいの」
「・・・おじいちゃん」

おじいちゃんの嬉しそうで悲しそうな表情をみたら断れないじゃない・・・。

遊びに行くことをOKしたんだから行かなきゃ。

私はすぐにおじいちゃんと歌舞伎を見に行った。

30人くらいしか入らない舞台は混んでいてほとんどお年寄り。

でもちらほら小さな子供が見えた。

(来る子なんているんだ・・・変わってるな)

おじいちゃんが入り口に立っている私に手招きをして席に座らせた。

「ここが1番良い席じゃな」
「え?どうして?はじっこじゃない」

はじっこの席は見えにくいはずなのに。

「はじの所に役者さんが出入りする入り口が近いじゃろ?出てくる所を1番最初に目に入れられて、帰っていく時に見ることが出来る笑顔も1人じめじゃ」

なるほどね・・・

おじいちゃんは学生の頃から見ている。

見ていて飽きないののかなと思うが私が毎日カラオケに行くのと同じか、
と考えると納得出来る。

急に拍手が聞こえて私は前を見た。

おじいちゃんの気持ちは納得した。
けど何を言っているのさっぽり分からない。

顔を白くぬってキレイな着物で何か言っている。

昔に来たようだ。

私は眠くなってきて欠伸をした。

その時とてつもなくキレイな女の人が舞台に出てきた。

赤い和傘を上品に持っていて紙吹雪が大量に降ってくる。

その人が出てきただけで紙は桜のように見えた。

(凄い・・・こんなにキレイな人が歌舞伎に出てるんだ・・・男の人だけじゃないんだ・・・)

その女の人が微笑むたび女性の歓声。

私も叫びそうになった。

お客さんが席を立って舞台の上にお金が入っている封筒やお花を置いていく。

女の人は踊りながらおじぎをした。

女の人が立ち去ると舞台は終了した。

「あぁーなつかしかったのぉ」

おじいちゃんは伸びをして嬉しそうに体を揺らした。

「私・・・今の人みたくなりたい・・・」
「はい?」
「会ってくる」

私は舞台に上がって女の人が出て行ったドアを開けた。
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