小説

導き者
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苦しい・・・

死にたい・・・

オレは本当は生きてちゃいけないんだよ・・・。

オレじゃなくてカナコが生きれば良かったんだよ・・・。



1年前。

オレはいつも通りに学校に行く途中だった。

毎朝6時に家を出るのは理由があった。

誰もいない道を歩くのが好き。

道草をして学校に行くのが楽しい。

朝ご飯を食べないで出て行って途中にあるパン屋でクリームパンを食べるのが好き。

母ちゃんに何を言われようがおかまいなしだった。

オレはクリームパンを口にくわえて校庭のど真ん中を横断中、
声をかけられた。

女の子がこっちに駆けて来る。

「きっさらぎくーん!!」

女の子はオレの背中に体当たり。

オレはむせた。

「なっ・・・誰!?」

真っ黒なロングヘアーが風で揺れた。

女の子はニッコリ笑った。

「あたし梅宮カナコ。知らない?」
「知らないけど・・・」
「そう・・・」

彼女の表情が一瞬暗くなった。

「転校生ですか?っていうかオレの名前何で知ってんの?」
「如月ゆみちか君でしょ?」

彼女はズバリと言った。

「うっ、正解;」
「あたしは何でもおみとーしなのよん♪」

オレは気味が悪くて無視して校舎の中に入った。

彼女は追いかけてきて言った。

「何で無視するのかなぁ〜?」
「知らないあなたと話したくありません;」
「あなたじゃない。カナって呼んで」
「知りませんよ・・・;」

オレは残りのクリームパンを口の中に詰めて靴を履いてスタスタと階段を上った。

3年の教室は1番上だから上るのがキツイ。

でももうあと4ヶ月で終わる。
卒業するからだ。

推薦で大学の合格は去年から決まっている。

カナはオレの腕を引っ張った。

「何ですか;オレにかまわないで下さいよ」
「あたしと友達になってくれない?」
「はぁ!?」

オレは思わず阿呆な声を出してしまって口を押さえた。

「如月君はおもしろい人ね」

カナはおもしろそうに笑った。

「オレと友達になりたいなら自分のこと教えて下さいよ」

カナはあごに人差し指を当ててから胸に手を当てた。

「あたしは梅宮カナコ。歳は20歳。一応3年生」

20歳で3年生・・・!?

もしかしてカナは留年している?

「失礼だと思うんですが・・・留年してるんですか?」

カナはうなずいた。

きっと軽いから勉強せずに留年したんだろう。

オレは適当に考えて話を進めた。

「何処のクラス?」
「6組よ。如月君は?」

6組っていったら落ちこぼれがいるクラスじゃねぇか。

「オレは4組。」
「そうなの?遊びに行ってもいい?」
「うーん・・・」
「やったぁ!!」

返事をしていないのにカナは嬉しそうに飛び跳ねた。

「じゃ、オレ今から勉強時間なんで」

オレは先に教室に入った。

しっかしおかしな女だ。

普通に話しているオレもおかしいが・・・。

オレは机に宿題を並べた。

オレが早くに来る理由もこれにある。

家に帰って宿題をしないからだ。

家には誘惑がたくさんあって集中できない。

教室でやる方が忘れ物もしないし。

窓を見ると雪が降っていた。

天気予報では明日から雪が止むらしい。

桜の木が蕾をつけるのをオレは待っていた。

宿題を終わらせた時やっと教室にクラスメイトが入ってきた。

クラスメイトは口々に言う。

「あいつまた早く来てるぜ?」
「暗いよねぇ・・・」
「勉強とかしてガリ勉かよ」

オレはシャーペンを握りしめて下を向いた。

いつもこうだ。

オレにはここに居場所はないんだ。

オレは昼休みになって屋上に向かった。

屋上は立ち入り禁止で誰も来ない。

1番落ち着く所だ。

ドアを帰ると鳥が羽ばたいてカナの姿が目に入った。

「あ、如月君」

カナは手を振った。

「いつもここにいんのか?」
「今日初めて来たの。見晴らしが良い所だね」

カナはカバンの中からアンパンを出して口の中に入れた。

口元にパンカスが付いた。

「んっ!おいしい!」
「オレの特等席だ。よけてくれ」

オレはカナの横に腰を下ろした。

カナはオレの横で気にせずアンパンを食べた。

本当におかしな女だ。
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